「みどりのゆび」という言葉があります。
その人が触れるだけで植物が育ち、花を咲かせる、
そんな人のことを言います。
山水園に半世紀以上も勤めてくれた仲居のKさんは、
そのみどりのゆびの持ち主でした。
紫陽花(アジサイ)が大好きだったKさんは、あちこちから枝をもらってきては挿し、
それがまた見事にみな活着して、すくすくと育ったものでした。
山水園の入り口への道の左側に咲く、さまざまな色の紫陽花は、そのKさんの置き土産です。
雨に濡れるほど、しゃんと顔をあげて咲くその姿は、うっとうしい梅雨の日々を明るく彩ってくれます。
もう十数年ほども前に亡くなったKさん。
ひとは過ぎていっても、花は今なお毎年美しく咲いて、たくさんの人を喜ばせています。